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スラックスなのに機能的。あらゆる街にフィットする<NEATTECH>

<EUREKA FACTORY HEIGHTS>(以下、EUREKA)が発表していくコラボレーションプロジェクト。第1弾のパートナーは<NEAT>です。<NEAT>はドレッシーなのにカジュアルライク。革靴にもスニーカーにもマッチするという二律背反のものづくりで注目されているパンツブランド。今回は僕らと一緒に<NEATTECH>というテクニカルラインを立ち上げて、ブランドとして初となる機能性に特化したスラックスをつくりました。動きやすくて、どんなスタイルにもマッチする機能的なパンツは僕らの自信作。<EUREKA>代表の小林がデザイナーの西野大士さんを訪ねて、今回のプロジェクトを振り返っていただきました。


Edit & Text: Shota Kato(OVER THE MOUNTAIN)
Photography: Masayuki Nakaya

かっこいい世界観ではなく、かっこいい洋服。

ー僕はNEATの存在を知っていたけど、人から勧められたという意味では、広島のセレクトショップ<ref.>を経営している中本さんがきっかけになっているんです。今も当時もNEATはスラックス専門のブランドという認識なんだけど、合ってますか?

西野 そうですね。小林さんにはじめてお会いしたのは2018年の夏ぐらい、たしか2019 SSの展示会でした。当時を振り返ってみると、小林さんは慎重派だなぁと。

ーえ、どういうことですか?

西野 最初のオーダーのとき、2回も足を運んでくださって。最初は一人、2回目はスタッフの方と一緒で、しっかりと吟味してバイイングしているんだなと思いました。

ーできれば全部のブランドのバイイングに、僕だけじゃなくスタッフの意思も反映したいと思っていて。

西野 だから、最初にオファーをいただいたときのことはよく憶えていて。<EUREKA>はいいお店っていう評判があったから、「一度、お店を見に行ってもいいですか?」ってお願いしたんですよね。展示会に来てくださった週の週末に、嫁と子どもと3人で岐阜まで行って。問屋街に佇んでいる、お店と通りの雰囲気がめちゃくちゃ良かったんです。正直なところ、岐阜にこんなに素敵なお店があるんだなって驚きました。小林さん本人は男っぽいのにお店は中性的。そのギャップに魅了されたというか。

ーよく言われます(苦笑)。ウチは特定のブランドに依存していないんです。ニュートラルな雰囲気というのは、ブランドのセレクトも空間も、すごく意識していて。

西野 あの天井が高くて広い空間は居心地がいいですし、しっかりと接客されているんだろうなという印象も浮かびました。

ーお客さんが長く滞在していてもお互い気にならないというか。子どもが走っていても、まったく気にならない。

西野 僕はいろいろな地方のお店に行きますけど、その土地に根付いた何かを自分なりに解釈して昇華していくというお店がかっこいいんですよね。小林さんのお店は東京にあってもかっこよくて洗練されていると思います。

―西野くんに面と向かって言われるのははじめてだから照れますね(苦笑)。ありがとうございます。僕が思う西野くんのものづくりは、お客さんとしっかり向き合っているなって。自分が好きなものがどうハマるのかを考えているというか。

西野 今後もそのスタンスでいいのかなと。あまり<NEAT>をブランドだと意識したくないんですね。だから、モデルを起用したルックも撮っていないですし、Instagramの投稿内容もめちゃくちゃですし。今の時代、かっこいいビジュアルは幾らでもつくれるじゃないですか。どこか洋服じゃなくてモデルがかっこいいという見え方もあると思うんです。

ー洋服よりも素敵な写真に目がいきがちというか。

西野 そうなんですよね。そうなってくると差別化が難しいんです。であれば、店頭に足を運んで、実際にモノを見て買ってもらいたい、という気持ちが強いかもしれないですね。これだけSNSが進んでいるとウソがつけない。逆に、かっこつけることもしにくいというか。

ー僕はそういう意味で西野くんが言う慎重派なのかもしれないです。セレクトショップとしての使命と言ったら大袈裟かもしれないけど、全国で売れているブランドだけを取り扱っていたら、お店に来てくださるお客さんにとってどうなんだろうって。それが地方のセレクトショップとなると、その街に住んでいる人たちに限られた情報しか届けられない。もちろんシーズンごとに推したいブランドはあるけど、お店を続けていくうえで核になるブランドはなくて。だから、よく取引先からメインブランドを聞かれるけど、「特にないです」と答える以外にないんですよ。<NEAT>はウチのラインナップでは異色かもしれないけど、異分子も混ぜることはセレクトショップのあるべき形だと思っていて。

西野 なるほど。小林さんはエウレカを11年も続けているんですよね。僕は5年目ですけど、やっぱり「目指せ10年!」は大きな目標であって。10年もお店をやっていれば、きっといろいろなことがありますよね。

ーそうですね。僕の場合は今の場所に移転したことが一番大きかったかな。以前の小さい空間のまま続けていくのはダメだなって、一大決心をした出来事だったなと改めて思いますね。

フルレングスならではのパーソナルオーダー感を楽しむ。

西野 小林さんはどうして<NEAT>を取り扱いたいと思ってくださったんですか?

ー<NEAT>はパンツしかつくっていないし、しかも日本人には馴染みが浅いスラックスに専念しているじゃないですか。色気を出さずにそれだけをつくり続けているところがすごくいいなって。あとはさっきも伝えましたけど、お店でセレクトしているブランドの中に異分子を見つけていたというのもあって。そういえば、なぜパンツだけをつくり続けているんですか?

西野 トップスっていろいろなブランドがあるから、なんとかなると思うんです。僕はパンツが重要だなと考えていて。日本人は自分の体型にコンプレックスを抱えていますよね。ふくらはぎがすごく出ているとか、そういうところを隠せて、誰が履いてもキレイに見えるパンツをつくりたいという気持ちから<NEAT>は始まっていて。僕は元々<BROOKS BROTHERS>でPRをやっていて、そのときに自分でカスタムしたパンツがあるんです。オーダーで3ピースのスーツをつくったんですけど、そのスラックスを修理に出して。自分好みにテーパードさせたりして。僕は当時からスーツに<New Balance>のスニーカーを組み合わせていたので、短い丈が好みなんですね。そうやって、自分好みのシルエットのパンツをつくろうと思ったのがきっかけなんです。

ーパンツを自分なりに再定義したんですね。ものづくりのうえで意識しているのはどんなことですか?

西野 丈を上げる前提のフルレングスのブランドって日本にあまりないんですよ。裾上げって面倒だけど、自分好みの丈感に仕上げられるのが最大のメリットなんです。パーソナルオーダー感があるというか。そこがお客さんにとっていいのかもしれません。ダブルにしたり、ジーンズステッチみたいにしたり。あとは自分が好きなテーパードと深いタックが入った形が誰にでもハマる、というのも大きいと思います。タックが深く入っているとお尻が隠れて。そこから裾に向かってキレイにテーパードしていたら、どんな人のコンプレックスも隠せるかもしれないって結果的に気づいて。

<NEAT>を履かないシーンに<NEATTECH>を。

ー今回は<EUREKA>の別注アイテムとしてスラックスを一緒につくりましたが、<NEAT>ではなく<NEATTECH>という名前なんですよね。

西野 去年エウレカの駐車場でやったフリマのときにお話をいただいたんですよね。僕と小林さんはまだ2年弱の関係なのか思うと、2019年は濃かったなと。

ーきっかけは、<EUREKA>の中で異分子的な存在の<NEAT>を、よりウチのテイストに寄せることはできないかなと漠然と考えたことで。そこから別注を相談したいなと思って、フリマで雑談しながら「NEATTECHってどうかな?」って話をしたんですよね。通常の<NEAT>のスラックスでは使われないストレッチ素材で、さらにウエストがウェービングベルトになっていて、フロントはボタンフライじゃなくてジップアップ。さらにスマートフォン用のポケットもある。そのアイデアを話したら、西野くんが二つ返事でOKしてくれて。

西野 僕も実際に足を運んだからわかるというか。たとえば、<NEAT>に<Le Yucca’s>を合わせる人はあの街にまずいないだろうというか。岐阜以外にもそういう街は全国にいっぱいあって。僕は淡路島の実家に帰って<NEAT>を履かないこともあるんです。やっぱりリラックスして過ごしたいから、ラクな感じを求めがちで。田舎のライフスタイルに合わないというか。だから、小林さんのアイデアは腑に落ちました。

―通常の<NEAT>はいい意味でコントラストが出るけど、<NEATTECH>はシルエットは同じなのに、ディテールの違いによって、ウチで取り扱っている洋服とよりフィットするというか。例えるならば、クラシックカーに最新のエンジンを載せ替えたようなハイブリッドなパンツなんですよね。

西野 普通だとこんな別注はやらないと思いますよ。生産をお願いしている工場の方に「え。これ、地方のお店の別注だけなんですか?」って驚かれましたから(笑)。量産しないと勿体ないって。

ーサンプルはグレーでつくったけど、実は黒とカーキとベージュの合計4色展開という。しかも<NEAT>よりも買いやすいプライスに設定していて。普通のブランドでは次から通常ラインとして販売しようという話になるかもしれないけど、僕らはこの別注だけで。

西野 僕はテクニカルを謳ったパンツは一切つくってこなかったんです。化学繊維を使ったアイテムもひとつの品番くらいですかね。基本的には天然素材を使っていて。<NEATTECH>は素材と仕様は異なりますけど、シルエットは<NEAT>そのもの。通常ラインとコンセプトが違うので、レングスも既に上がっています。僕としては<NEATTECH>をやることでハッピーになる人が増えると嬉しいですし、ここから<NEAT>のパンツを履いてくださる方が出てきてくれたらと思いますね。

ファッションビジネスは異質。おもしろさありき。

―<NEATTECH>は<NEAT>のテクニカルラインだけど、こういった機能を突き詰めるものづくりは、通常のラインとは違うからこそ取り組めることなんですか?

西野 まさにそうですね。お客さんが思い浮かべるNEAT像と、僕のNEAT像が凝り固まっていて、そこから脱するのは勇気が要るというか。でも、こうやって別注の声をかけていただくと、すんなりと外に出ていけて、いろいろなNEATの見え方ができるようになるんです。だから、<NEATTECH>でスウェットをつくりたいという相談も受け入れられて。

ー<NEATTECH>自体は定義がないから、トップスもつくりたかったんですよね。将来的にジャージがあってもいいかもしれないし、スウェットがあってもいいということで、まさかの<THE INOUE BROTHERS>のボディを使わせていただけることになって。

西野 井上兄弟もよくOKしてくれましたね。

ー本当にありがたいことで。西野くんも井上兄弟も、ファッションビジネスになり過ぎていないというか。

西野 小林さんを目の前にして言うのもアレですけど、別注案件って大変なんですよ。それほど売上にはならないですし、労力もかかる。

ーたしかに。利益だけ見ると、ビジネスとして断るのも仕方ないなと。

西野 でも、ファッションは異質というか。おもしろいと思って取り組むことがビジネスなのかもしれないなって。これからのマインドとしては、いろいろな人を巻き込んで、みんなでつくっていく<NEAT>にしていければと思っています。<NEAT>という船に乗って一緒に漕いでいくことで、グランドラインのラフテルには到着できるのかもしれないと思う部分もあって。

ー西野くんはパーソナルなつながりでの動きをしていますよね。

西野 別注はフレキシブルに受けていますね。L’ECHOPPEの別注<NEAT USA>は形と素材が別注でしたけど、それ以外の仕様を変えたのは今回がはじめてです。<NEAT>に足りていないのって、アクティブに使えないことなんです。子どもと公園で遊ぶ、家族で花火を座りながら見るとか、アクティブなシーンにはデニムやチノパンのほうが合っているのは間違いないんですよ。だから、<NEATTECH>を日常に履いてくれる人が増えるといいなと。

ー僕も<NEAT USA>のトラウザーを履いていますけど、やっぱりコットン100%のパンツはいいんですよね。タフで洗えて、経年変化も楽しめる。一方で、<NEATTECH>はストレッチが効いていてフレキシブルに使えるから、子どもの送り迎えや、コンビニ、居酒屋にも履いていける。特に春夏の着心地は最高だと思う。

西野 <NEAT>らしいタック感とシルエットに機能を乗せたという。まさに<NEATTECH>ですね。

ー我ながら、いい名前だと思います(笑)。

 

T/C Stretch Twill Tapered Easy Trousers
Color : Black, Grey, Khaki, Beige
Size : S, M, L
Price : 30,000yen(w/o tax)
Release Date : February 14th, 2020

オンラインストアでの販売は在庫のご用意があるものに限り2月21日(金)11時より対応させていただきます。